つ市民であるという認識が、まだ十分でないということです。自分で直接社会に貢献できない人々を、第二級の市民である、第一級の市民ではないという扱いを実際はしています。この点が変わらないと、基本的に社会は変わらないのではないでしょうか。女性の問題とか高齢者の問題とかいう以前の、基本的な社会のあり方ですね。
樋口 かたや人口880万人、かたや1億2500万。人口の規模が違い、スウェーデン・モデルはそのまま日本には当てはまらないとか、福祉のせいで財政が破綻したとか、スウェーデンに学ぶことに消極的な声も、相変わらずあります。しかし、これまであまり知られていなかった、スウェーデンの人々の基本的なものの考え方、何を優先するのか、そのために何に耐えなければならないのかといったことを明確にする姿勢には、まだまだ学ぶ点が多いことを改めて感じます。ただ、根本に税金の使い方に対する基本的信頼、モラルの高さがあることをしみじみと思い知らされます。
樋口恵子東京家政大学教授。「高齢社会をよくする女性の会」代表。
東京大学文学部卒業。総務庁男女共同参画審議会委員、厚生省老人保健福祉審議会委員など務める。著書に「私の老い構え」(文化出版局)、「女と男の老友学」(労働旬報社)、近著には「私は13歳だった」(筑摩書房)など多数。
訓覇法子三重県生まれ。日本福祉大学、ストックホルム大学に学ぶ。
現在、ストックホルム大学大学院研究員。著書に「スウェーデン人はいま幸せか」(NHKブックス)、「スウェーデンの四季暦」(東京書籍)。新書「現地から伝える−スウェーデンの高齢者ケア」
*)季刊誌『エイジング』1997年3月号(エイジング総合研究センター発行)より抜粋。
初夏のストックホルム 近郊の森に、保育園児・職員・親合同の交流ピクニック
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